གཙང་ནག་པ་བརྩོན་འགྲུས་སེངྒེ། ཚད་མ་རྣམ་པར་ངེས་པའི་ཊིཀ་ལེགས་བཤད་བསྡུས་པ།

(Otani Zogai No. 13971, 210 fols.)

  1. Remarks
  2. Chapter 1 (2012/4)
  3. Chapter 2 (2013/7)
  4. Chapter 3 (2014/6)
  5. E-text for search (folio numbers and notes are deleted.)

(This e-text and the sa-bcad are edited by Dr. Thub bstan dga’ ba and Choi Kyeonjin.)

チベット論理学の伝統は、後伝期の初めにカダム派のサンプ寺において始まった。そこでは、ダルマキールティの第一の主著である『プラマーナ・ヴァールティカ』ではなく、二番目に書かれた『プラマーナ・ヴィニシュチャヤPramāṇaviniścaya(量決択)』に対する研究が盛んであった。現在知られている『量決択』注を古いものから挙げると以下の如くである。

まず、その『量決択』および、ダルモッタラによる浩瀚な註釈をチベット語訳したゴク・ロデンシェーラップ(rngog blo ldan shes rab, 1059-1109)による注釈書『量決択難語釈(ཚད་མ་རྣམ་པར་ངེས་པའི་དཀའི་བའི་གནས་རྣམ་པར་བཤད་པ།)』(『カダム全集』Vol.1, 144 fols.)が著された。

次にチベット論理学を大成したものとして有名なチャパ・チューキセンゲ(phywa pa chos kyi seng+ge, 1109-1169)による詳細な註釈書『量決択注・字句と論理の要処に入る智慧の光明(ཚད་མ་རྣམ་པར་ངེས་པའི་འགྲེལ་བཤད་ཡི་གེ་དང་རིགས་པའི་གནད་ལ་འཇུག་པའི་ཤེས་རབ་ཀྱི་འོད་ཟེར།)』(『カダム全集』Vol.8, 197 fols.)が著された。

その次に位置するのが、本電子テキスト化の対象としているツァンナクパ・ツォンドゥーセンゲ(gtsang nag pa brtson ‘grus seng+ge, 12C.)の『量決択註・善説要集(ཚད་མ་རྣམ་པར་ངེས་པའི་ཊི་ཀ་ལེགས་པར་བཤད་པ་བསྡུས་པ།)』 (Otani Zogai No. 13971, 210 fols.) である。ツァンナクパは、生没年は不明ながら、上記チャパの弟子であり、時代を接して二つの注釈書が書かれたことになる。

他のカダム派の文献は、2002年にデプン寺の十六羅漢堂などで発見されるまで失われたものと考えられていたが、このツァンナクパの『量決択註』は以前より大谷大学図書館に所蔵され、また『知識論決択広註善釈要集』(大谷大学所蔵西蔵蔵外文献叢書, 2. 京都: 臨川書店, 1989) として影印版が刊行されていた。

その後には、同じサンプ寺でジュニャーナシュリー(dznya na shri = ye shes dpal, 生没年不明)の『量決択註・明慧の首飾り(ཚད་མ་རྣམ་ངེས་ཀྱི་ཊཱིཀྐ་བློ་གསལ་མགུལ་རྒྱན།)』(『カダム全集』Vol.44, 101 fols.)、チュミクパ・センゲペル(chu mi pa seng+ge dpal, 13C)の『量決択注(ཚད་མ་རྣམ་པར་ངེས་པའི་འགྲེལ་པ།)』(『カダム全集』Vol.87, 152 fols.)、ナルタン寺のチョンデンリクペーレルディ(bcom ldan rig pa’i ral gri, 1227-1305)の『量決択註・飾りの華(ཚད་མ་རྣམ་པར་ངེས་པའི་ཊཱིཀྐ་རྒྱན་གྱི་མེ་ཏོག)』(『カダム全集』Vol.62, 149 fols.)が書かれていく。

これらのうち、ツァンナクパの『量決択註』は、少なくともフォーリオ数から言えば、最も浩瀚なものであり、またチャパの註釈のすぐ後に書かれたという意味でも、重要な位置を占めるものである。またすでに影印版が刊行されていたこともあり、電子テキストの入力も比較的早い時期から進められた。

これらのカダム派の典籍は、全てウメ書体で書かれ、またその内容も、後代のサキャ派やゲルク派の整備された書き方ではなく、極めて濃縮された記述となっていて、その議論を辿るのも困難なことがしばしばである。本電子テキストは、何度かの校正を経、また最近刊行された『量決択』のサンスクリット語原文とも突き合わせて対応箇所を注記し、詳細な科段を抜き出して整理したものであり、今後のカダム派の論理学研究に大きく貢献するものと言える。

文字の色によって注記などを織り込んでいるため、本研究班の他の電子テキストとは異なり、校訂テキストをPDFで公開することとした。

本校訂テキストは、Thub bstan dga’ ba氏によって準備された資料をもとに、崔境眞氏(東京大学大学院博士課程)が整理して作成したものである。