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一 一文不通のともがらの念佛まふすにあふて、なんぢは誓願不思議を信じて念佛まふすか、また名號不思議を信ずるかといひおどろかして、ふたつの不思議を子細をも分明にいひひらかずして、ひとのこゝろをまどはすこと。この条かへすがえすもこゝろをとゞめておもひわくべきことなり。誓願の不思議によりて、やすくたもちとなへやすき名號を案じいだしたまひて、この名字をとなへんものをむかへとらんと御約束あることなれば、まづ弥陀の大悲大願の不思議にたすけられまひらせて生死をいづべしと信じて、念佛[*1]のまふさるゝも、如来の御はからひなりとおもへば、すこしもみづからのはからひまじはらざるがゆへに、本願に相應して實報土に徃生するなり。これは誓願の不思議をむねと信じたてまつれば、名號[*2]の不思議も具足して、誓願・名號の不思議ひとつにして、さらにことなることなきなり。つぎに、みづからのはからひをさしはさみて、善悪のふたつにつきて、徃生のたすけさはり、[*3]二樣《ふたやう》におもふは、誓願の不思議をばたのまずして、わがこゝろに徃生の業をはげみてまふすところの念佛をも自行になすなり。このひとは名號の不思議をもまた信ぜざるなり。信ぜざれども、邊地・懈慢・疑城胎宮にも徃生して、果遂の願のゆへにつゐに報土に生ずるは、名號不思議のちからなり。これすなはち、誓願不思議のゆへなれば、たゞひとつなるべし。 |
【注記】 *1 右行間に「の」一字補記 *2 右行間に「の」一字補記 *3 本文「やうやう」をけして右行間に「二樣《ふたやう》」と訂記 |
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