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[*1]歎異抄 竊《ひそかに》廻《めぐらして》愚案《ぐあんを》粗《ほぼ》勘《かんがうるに》古今《ここむを》、歎《なげき》異《ことなることを》先師《せんしの》口傳之《くでんの》真信《しんしんに》、思《おもふに》有《あることを》後學相續之疑惑《こうがうさうぞくのきわく》、幸《さひはひに》不《ずは》依《よら》有縁知識《うえんのちしきに》者、爭《いかでか》得《えん》入《いることを》易行一門《ゐぎやうのゐちもんに》哉《や》。全《またく》以《もて》自見之覺語《じけんのかくごを》、莫《なかれ》乱《みだること》他力之宗旨《たりきのしゆしを》。仍《よて》故親鸞聖人御物語之趣《こしんらんしやうにんのおんものがたりのおもむき》、所《ところ》留《とどむる》耳底《みみのそこに》、聊《いささか》注《しるす》之《これを》。偏《ひとへに》為《ため》散《さんぜんが》同心行者之不審《どうしむぎやうじやのふしんを》也《なりと》[云ゝ]。 【 竊かに愚案を廻して、ほぼ古今を勘うるに、先師の口傳の真信に異なることを歎き、後學相續の疑惑有ることを思ふに、幸ひに、有縁知識に依らずば、いかでか易行一門入ることを得んや。全く自見の覺悟を以て、他力の宗旨を乱ることなかれ。仍て故親鸞聖人の御物語の趣、耳の底に留むる所、いささか之を注す。偏へに同心行者の不審を散ぜんが為なりと云ゝ 】 |
【注記】 *1 表紙には中央に「歎異抄一通」とあり、右下に「蓮如之」とある。 |